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松右衛門帆の特徴
松右衛門帆は、柔らかさと軽さをキープしつつも厚くて丈夫という帆布としては矛盾している要素を成り立たせており、経緯2本引き揃えた独特な織り目を持った帆布です。
この太さの違う糸を使った織り方に特徴があり、現在流通している服飾素材とは違い、厚みがありゴツゴツとした織り目が見て取れます。
松右衛門帆の規格
本来、帆布はその使用用途に応じた「柔らかく・軽く・薄い帆布」と「硬く・重く・厚い帆布」があり、規格に基づき区分されています。
帆布は日本工業規格(JIS規格)により、1〜11号まで分けられ、数字が小さいほど硬く重く厚い帆布となり、数字が大きいほど柔らかく軽く薄い帆布になっています。
松右衛門帆をこの規格に照らし合わせると厚みが規格外の「0号帆布」に相当します。
脚注 綿帆布規格表・株式会社タケヤリHP他より参照 ※1997年 帆布のJIS規格は廃止
松右衛門帆復活の経緯
工楽松右衛門はどのようにして「松右衛門帆」の考案したのでしょうか。松右衛門帆以前、「帆布」というものは存在せず「帆」を使っていました。
「帆」とはつまり帆船に張られ風を受けるもの、であり風を受けられて船が進めばなんでもいいわけです。
そこで風を受けるために様々なものが使われてきました。
藁や筵(むしろ)、麻布などで代用したもの、木綿が普及してからは木綿布を何枚かつなぎ合わせたもの(これを刺帆という)を主に帆として使用していました。
しかし、船が大きくなり移動距離が増えると当然それに見合った帆が必要となります。筵では強風に耐え切れず、麻は水を吸って重くなり操舵性が悪く、刺帆はつなぎ合わせた部分の強度が弱く、帆のメンテナンスの為にたびたび寄港や停泊をする必要がありました。
しなやかで風をたくさん受けられ、水刷毛が良く、軽く丈夫な帆が求められていたのです。
そこで御影屋(工楽)松右衛門が発明したのが「松右衛門帆」です。極太糸を使用した織り方を工夫し、厚みと丈夫さを両立させました。
また、綿の特性として水を通さず空気を通すので、当時の帆の素材としては最適ともいえたでしょう。
試行錯誤の末に生み出された「松右衛門帆」は他の何かで代用された「帆」ではなく、帆として作られた布「帆布」です。
これは日本帆布の元祖とも呼ばれ、日本の海運業に大きな発展をもたらしました。
現代に松右衛門帆布を復活させよう、と試みた際に困難を究めたのが基本となる極太糸が工業的に手に入らない事でした。
そこで、御影屋(工楽)松右衛門のように工夫を凝らし、要求される糸の太さを生産可能な糸で特注の撚糸機にて数本撚り合わせ、撚り係数を調節し独自に再現することに成功いたしました。
こうして、現代に類を見ないほど厚く丈夫でありながら、しなやかで軽い帆布「松右衛門帆」が蘇りました。
脚注 Wikipedia「帆布」他より参照
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